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僕は歯並びがわるいせいで、歯を磨くのに苦労する。
「君は歯の数に対して歯茎が狭すぎるんだ」とむかし歯医者さんは言った。その歯医者さんは僕に熱心に矯正をすすめたけれど、僕は断ってしまった。16歳の頃だ。
いま思えば、あのときさっぱり矯正しておくべきだったのだ。と思いながら、24歳の僕は別の歯医者さんに向かいながら、血の味のする唾液をのみこんだ。
歯を磨くと血が出るようになって、何日か経っていた。こういうことは前にもあった気がするし、初めての気もした。痛みがないだけ不気味だ。
「これは歯周病です」と若い歯医者さんは冷笑しているみたいな顔で言った。「かるーいヤツだけですけどね」
いじくり回されて気もちがわるいせいで何も答えられなかったけれど、ショックだった。
歯周病って、あのオジサンやオジイサンがかかるアレだろ?
「いまは若い人にも多いし、何しろ日本人の80%以上が歯周病なんです」歯医者さんは言った。「痛みはそんなにないでしょう、だから、気づかないんですな」
とにかく、やることはひとつだと歯医者さんは言った。「歯石をとりましょう」
僕のゆがんだ顔を見たからか、ちょっと微笑んでみせ、「痛くないよ」と言う。
それが本当じゃないことを、僕は経験で知っている。
「歯周病は初期の頃に治しちゃうのがいちばんなんです」